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海外での経験を活かして愛媛の地域創生にチャレンジ
愛媛県観光スポーツ文化部文化振興課
髙野 将太
私は、高校卒業後、教育大学への進学を選び、小学校の教員になることを目指していました。大学4年生になり、教員として教壇に立つ前に、もっと自分の視野を広げておきたいと思い、以前から関心のあったJICAボランティアに応募することにしました。教員として経験の一つとして応募したボランティアでしたが、中米のエルサルバドルでの活動は、学校教員ではない新しい生き方を考える一つのきっかけとなりました。それまで、外国語を覚えたこともなく、外国人と話したことすらない私にとってボランティアとして活動した2年間はいろんな意味で大きなインパクトを受けました。日本の常識が通用しない環境の中で、現地の教育と日本の教育をどう融合させていくかを考え、現地の先生たちと授業を作っていきました。時には、考え方が合わず、対立することもありましたが、それでも少しずつ理解を示していただき、異なる文化背景を持つもの同士が同じ目標をもって一緒に働く経験は本当に大きな経験になりました。
エルサルバドルでの活動を通して、将来的には地元愛媛で仕事をしながらこの経験を還元していく、今度は、愛媛と中米をつなぐことができるような仕事をしていきたいと考えるようになりました。まだ漠然とした目標でしたが、大使館で働く機会を得られたことでより将来のプランが明確になっていきました。世界各国にある日本大使館には、外務省職員だけでなく、外務省に出向する民間・他省庁出身者や現地職員、有期雇用の職員など様々な立場の方が日本との関係強化や在外邦人の安全確保などの仕事に従事しています。私は、その中で在外公館派遣員という立場で在エルサルバドル日本国大使館に派遣されることとなりました。在外公館派遣員は、語学力を生かして、日本から来る要人往来支援(※1) や大使館運営を支える会計業務や契約、労働関係の現地法令の調査などに3年間従事しました。在外公館派遣員として従事したのち、同じ在エルサルバドル日本国大使館で草の根・人間の安全保障無償資金協力委嘱員として勤務することとなりました。草の根・人間の安全保障無償資金協力は、開発途上国を対象に、劣悪な衛生環境にいる人や十分な教育を受けられない人など安全な生活の実現を目指す無償資金協力の一つです。エルサルバドルでは、主に上水道の整備や学校教室の改修、保健所の建設のプロジェクトを担当し、プロジェクトの事前調査、実施中の案件監理、また施設建設後の使用状況モニタリングなどを行いました。大使館で6年間働くことで、様々なことを学べただけでなく、愛媛でこの経験を活かすために愛媛県庁職員として働きたいという明確なビジョンを描くことができました。特に、草の根委嘱員の業務の中でプロジェクトを申請したい現地の方へのヒアリングや事前調査を行いながら、どこに課題があり、どういった解決を目指していくのか、またプロジェクト実現後はどういった形で維持管理していくのか、住民が自ら考え具現化していく支援ができたことは大きな経験となりました。
(※1)公務にて来訪する国会議員、官公庁からの出張者などに対して、宿舎予約や空港からの送迎、配車手配などを行い、滞在中安全に公務を行える各種支援を行うこと。
また、日本に帰国後は、JICA四国にて中小企業支援・SDGsビジネス支援事業を担当する専門嘱託として働く機会を得ました。JICA四国での業務では、海外特に成長著しい開発途上国の現地課題をビジネスニーズと捉える中小企業の方と話をしながら、その実現に向けてJICAの事業をどう活用していくかを一緒に考えていきました。また、事業採択後は、プロジェクトを円滑に進めていくために、プロジェクトの進捗状況を定期的に確認したり、現地調査の実施に向けた支援を行ったりしました。プロジェクトの計画を策定していく段階では、現地進出を図るためにどういった情報が必要なのか、そのたにどういった調査を実施していく必要があるのかを丁寧に確認しながらビジョンを共有していくことを意識して仕事をしてきました。
在外大使館で派遣員業という立場で日本の外交を支える大使館業務に携わり、日本との友好関係強化に努めるとともに公務員としての働き方の基礎を学びました。草の根委嘱員として、現地の人と一緒にプロジェクトを進めていくことで、現地の課題解決に微力ながら貢献していくやりがいを感じました。また、JICAで働くことで地域をよりよくしていこうという地域企業の思いを具現化していく経験を得ることができました。これまでの在外での経験やJICAでの経験を活かして、これからは愛媛の地域創生のために働きながら、JICAや大使館で得られた在外での経験を地域に還元していきたいと思います。愛媛では少子高齢化が急速に進展しており、県外や国外からの移住者をいかに愛媛に呼び込んでいくかは大きな課題です。こうした現状の中、外国人を巻き込んだ地域の活性化は今後より重要になっていくものと考えています。私は、今、愛媛の文化振興事業に携わり、文化を通した地域の活性化事業の一つである愛媛国際映画祭を担当しています。愛媛県の伝統を守りつつも、移住者や在住外国人も巻き込んだ文化事業の実施を通して、多文化共生社会の深化と県民生活の向上を目指して仕事に取り組んでいきたいと思います。
写真1枚目:ボランティア活動の様子
写真2枚目:草の根事業で救急車を供与した様子
写真3枚目:竣工式では友好の証として桜に似たエルサルバドルの木(マキリシュアット)を植樹します
【関連ファイル】
・令和5年度愛顔(えがお)感動ものがたり映像化コンテストの作品募集について